しじみの佃煮は体にいいの?(しじみの佃煮)

しじみの佃煮

しじみはみそしるの具になる以外に、佃煮の具としても一般的です。
みそ汁に用いられるしじみは鮮度が命で常温では日持ちがしませんが、しじみの佃煮は湿気や直射日光に注意すればある程度長期間の保存が可能です。
ところでしじみをはじめとした佃煮は乾物と異なり水分がある程度含まれているのに、なぜ腐敗せずに保存性が高まるのでしょうか?
また、佃煮にすることで何か体に有意義なことがあるのでしょうか?
今回はしじみの佃煮に関してお話します。

佃煮が常温保存で利く理由

佃煮は醤油や砂糖を用い甘辛く煮詰めた調理ですが、同じく常温保存が可能な乾物と違い相応の水分を保持しているにも関わらず長期保存が可能です。
通常、しじみなど水分を多く含有している生鮮食品は、常温でカビや雑菌などがすぐに繁殖して腐敗してしまいます。
食物の腐敗は科学的には(1)微生物によって腐る変質を「腐敗」、(2)たんぱく質や糖質が酸化して腐る変質を「変敗」といい区別します。
実は、佃煮はこの「腐敗」と「変敗」による変質を巧みに抑制している食品です。

腐敗

腐敗はカビや細菌などの微生物が食物に付着し繁殖する際に、食物のたんぱく質を分解して有害な物質を放出するために発生します。
一方、同じ現象でも人体に有益な物質を放出する場合は発酵と呼び、腐敗と区別します。
微生物がたんぱく質を分解するためには相応の水分が必要です。
乾パンの保存性が高いのは、水分をほとんど含有しないので細菌が繁殖できないからです。
ところで、佃煮はある程度の水分を保持しているにも関わらず、長期間保存で腐敗が進まないのはどうしてでしょうか?

腐敗と水分

食物の水分には、糖質やタンパク質と分子として結合している「結合水」と、分子が自由に移動できる「自由水」があります。
結合水は不活性の水分で、冷凍しても熱しても結合している糖質やたんぱく質と分離することはありません。
一方で自由水は冷凍すれば氷となり、高温で熱すれば蒸発します。
微生物はこの自由水を繁殖の際に使用するので、食品から自由水を減らせば腐敗は起こりません。

水分活性

食物に含有する水分の量を数値化したのが水分活性です。
純粋な水を1Awとみなし、この数字より少なければ食品中の自由水が少ないことを意味します。
水分活性が0.9Aw以下でカビと一部の細菌以外は繁殖できず、0.65Aw以下になると微生物は増殖できなくなり、0.6Aw以下で食物が含有する酵素の活性が低下しカビも生えなくなります。
同様にたんぱく質の酸化による「変敗」も水分活性が低下するに従い起こりにくくなりますが、極端に低下すると上昇してしまい、0.3Awで最低となります。

佃煮と水分活性

佃煮の水分活性は0.85~0.65Awの範囲なので微生物の増殖が抑えられ、水分を含有しても長期保存が可能となります。
特に昔の製法で作られた佃煮は塩分と糖分が濃く、これが食品から水分を奪うとともに、微生物との浸透圧に差が生じて微生物からも水分を奪うため微生物が繁殖できません。
しかし、たんぱく質や糖質の酸化の速度は低下しますが、不活性となる0.3Awより高い数値なので変敗してしまいます。

佃煮と変敗

佃煮が含有するたんぱく質や糖分が酸化して悪性の物質に変質する変敗が気になります。
ところが佃煮は出来立てよりも、ある程度日にちを置いたほうが旨味が増します。
これは食物を佃煮にすることで発生するメイラード反応によって発生する現象で、これが佃煮の変敗の進行を抑制します。

メイラード反応

食物のアミノ化合物と還元糖を加熱すると褐色物質のメラノイジンを生み出すメラード反応を短時間で生じます。
メラノイジンは抗酸化物質であるビタミンEよりも強力な抗酸化作用があり、これが佃煮の酸化による変敗を防止します。

メイラード反応と味

またメイラード反応は各種アミノ酸から香気成分を生成します。
香気成分は単純に鼻で臭覚として感知されるものと、口腔内で咀嚼されて揮発し味覚と一緒に知覚されることで「味わい」となるものがあり、しじみを佃煮にすると味わいが増すのはシジミに含まれるアミノ酸の一部のメイラード反応によるものです。
ちなみに玉ねぎを狐色に炒めると甘みが増したり、コーヒーを焙煎すると香気が増したりするのもメイラード反応です。

しじみの佃煮と栄養素

しじみは良質のたんぱく質、疲労回復に効果のある遊離アミノ酸のオルニチン、ビタミンB群やビタミンE、カルシウムや鉄、亜鉛などのミネラルが豊富な食品です。
ビタミンB群は水溶性ビタミンですが熱には強く、煮詰めて作られるしじみ佃煮は有益な栄養素を余すことなく摂取することができ、さらにメイラード反応で抗酸化物質も増えています。
しかし、昔ながらの製法では保存効果を高めるため塩分を多量に使用されているので、食べすぎには注意が必要です。

まとめ

日本の食卓の名脇役である佃煮は、江戸時代に雑魚を保存食とするために生まれた料理法です。
佃煮はある程度の水分を保持しながら腐敗しないのは、塩分や糖分と共に煮詰めることで細菌が増殖に使用する自由水を減らすと共に、アミノ酸と糖分が加熱でメイラード反応を起こすことで抗酸化物質のメラノイジンが生産され変敗の進行が抑制されるからです。
しじみの佃煮は塩分さえ気をつければ、しじみの栄養素を凝縮した上にメイラード反応で抗酸化物質と味わいも増しているので、しじみの味噌汁以外に疲労回復効果のあるオルニチンを摂取するのに最適な食品です。
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