しじみの旨味成分

出汁が美味しいしじみは旨味成分の宝庫

しじみはみそ汁の具に使うばかりではなく、しじみ自体が出汁になる旨味の宝庫です。
旨味は日本人が発見した味覚で、最近は海外でも「Umami」として認知され、自国の料理に活かすシェフも増えています。
ところで、どうしてしじみは出汁に使えるほど旨味成分が多いのでしょうか?
今回はしじみの旨味成分に関して解説します。

旨味成分とは

旨味とは基本的にはアミノ酸などの有機酸が舌で感じる味覚のことです。
舌には味蕾と呼ばれる感覚器官があり、甘味、塩味、苦味、酸味などを区別しますが、その細胞に旨味成分の一つであるグルタミン酸の受容体があるので、旨味も味覚として認知されます。
旨味には昆布に代表されるグルタミン酸、野菜や味噌のアスパラギン酸、きのこ類のグアニル酸が三大旨味成分と呼ばれています。
これ以外にも鰹節のイノシン酸、貝類のコハク酸などが旨味成分です。

しじみの旨味成分

しじみの出汁の味を左右する旨味成分は主に以下の3つです。
アスパラギン酸
グルタミン酸
コハク酸
これらの旨味成分がどのように発生し、どんな効果があるか見てみましょう。

しじみは生より水煮の方が多い旨味成分

まずは文部科学省が発行する2015年度版日本標準成分表準拠を見てみましょう。
下記はしじみ可食部100g当たりに、うまみ成分がどれくらいの量含有されているかの数値です。
アスパラギン酸 グルタミン酸

660mg

850mg

水煮

1400mg

1800mg

表からも分かるように、アスパラギン酸もグルタミン酸も生より水煮の方が、数値が上がっています。
実は旨味成分はアミノ酸なので、たんぱく質でできている細胞が壊れると生まれるからです。
新鮮で採れたてより、時間を置いてたんぱく質が何らかの要因でアミノ酸に分解された方が旨味成分の総量が増すのです。

しじみの旨味成分の生成時期

生より水煮のしじみの方が旨味成分が多いのなら、その旨味成分はいつ増えるのでしょうか?

コハク酸

まずしじみを食べる際に砂抜きが必要です。
砂抜きの際に濃度1%の食塩に浸すと、淡水生物のしじみは体内の細胞の浸透圧を周囲と同じにするために自身の筋繊維に含まれるコラーゲンを分解し、コハク酸が生じます。

アスパラギン酸とグルタミン酸

またしじみは冷凍保存すると旨味成分が増します。
しじみは変温動物ですが、生命維持には基礎代謝が行われ養分をエネルギーに変換しています。
通常は入水管で水と共に入ってきた有機物やプランクトンを餌としてエネルギーに変えますが、冷凍保存すると餌が無いまま冬眠状態に入り、この間も生命維持のために基礎代謝が行われます。
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エネルギーは通常餌として取り込んだ養分を変換しますが、飢餓状態だと脂肪など蓄積した養分を分解してエネルギーとします。
貝類は脂肪が少ない上筋繊維が豊富なので、エネルギーに変換しやすい筋繊維のたんぱく質の分解が早い段階で行われアミノ酸に分離します。

また冷凍保存すると細胞内の水分が凍結します。
水は氷になると体積が増え、たんぱく質であるしじみの細胞壁を壊します。

このように、しじみのエネルギー代謝と物理的な細胞の破壊でたんぱく質が分離を起こし、旨味成分であるアスパラギン酸、グルタミン酸がより多く発生します。

しじみの旨味成分の効果

しじみに含有されるアスパラギン酸、グルタミン酸、コハク酸は味覚としての楽しみ以外に健康維持にも有用な栄養素です。
それぞれどんな効用があるのか見てみましょう。

アスパラギン酸

アスパラギン酸とは野菜のアスパラガスから発見された、人の体内でも生産できる非必須アミノ酸です。
体内では脳や脊髄に多く存在します。
アスパラギン酸の主な効果は以下の通りです
疲労回復
アンモニアの無毒化
体調を整える

疲労回復

人は疲労が蓄積すると乳酸が生産されます。
乳酸の分解は体内のクエン酸回路を機能させますが、これにはカリウムやマグネシウム、カルシウムといったミネラルが必要で、アスパラギン酸はこれらを運搬する役割を担います。
クエン酸回路を効率的に機能させることが疲労回復に繋がります。

またアスパラギン酸は人のエネルギー源であるグリコーゲンの生産に使用されます。
グリコーゲンは貯蔵目的の糖質で、クエン酸回路で合成され肝臓や筋肉中に蓄えられる一方、必要な時は再びクエン酸回路で分解されエネルギーに変換されます。
グリコーゲンの生産と分解がスムーズに行われると筋持久力が増し、疲労が少ない体質になります。

アンモニアの無毒化

アスパラギン酸は体内で発生する有毒なアンモニアとアスパラギン合成酵素で結合し、無害なアスパラギンを生産します。
アスパラギンは利尿作用を促し、いち早く尿と共に体内からアンモニアを排出します。

体調維持

アスパラギン酸は中枢神経系の興奮性の神経伝達物質です。
アスパラギン酸はグルタミン酸と同じく学習と長期記憶の形成に必要なNMDA受容体に作用し、脳で起こるストレスの抵抗性を高める効果があります。
またアスパラギン酸は体に必要なミネラルを体の各部位に運搬する役割も担い、体全体の体調維持に効果があります。

グルタミン酸

グルタミン酸は小麦のたんぱく質であるグルテンから発見されたアミノ酸で、非必須アミノ酸の一つです。
グルタミン酸は昆布で有名ですが、実はトマトの方が含有量は多く、そもそも全ての食品に含まれていると言っていい程一般的なアミノ酸です。

グルタミン酸の効果は以下の通りです。
アンモニアの無毒化
免疫力向上
脳の活性化

アンモニアの無毒化

グルタミン酸はしじみに含まれるオルチニンと同様に肝臓でアンモニアを無毒化する役割を担いますが、グルタミン酸は肝臓以外に脳や腎臓、骨格筋内でもアンモニアの無毒化を行います。
グルタミン酸の場合、肝臓内にあるグルタミン合成酵素の働きでアンモニアが結合し、無毒なグルタミンが合成されます。

免疫力向上

グルタミン酸がアンモニアと結合して生まれるグルタミンは免疫力を向上させる効果があります。
グルタミンは白血球やリンパ球など免疫系の細胞の餌となり、その増殖を促進します。
また、グルタンは運動時の筋肉の分解を抑制したり、腸管のエネルギー源となったり、傷口の修復を促進するなど体の健康維持に活躍します。

脳の活性化

グルタミン酸は脳で発生したアンモニアを無毒化して脳の機能を保持する以外に、興奮性の神経伝達物質としても働きます。
特に記憶を一時的に保管する海馬の受容体に作用すると、その記憶の保管期間が長くなります。
また大脳で過去の記録を呼び覚ますときに発生するストレスホルモンのコルチゾールの分泌を抑制します。

コハク酸

コハク酸は琥珀を熱分解した時に発見された有機酸です。
アスパラギン酸やグルタミン酸がたんぱく質を分解して生まれるアミノ酸なのに対し、コハク酸は遺伝子情報に関連するDNAやRNAなどの核酸から生み出されます。
コハク酸は貝類や、アルコール発酵の副産物として生産されるため日本酒やワインなどに多く含有されます。

コハク酸の効果

コハク酸は細胞が酸素を取り込みエネルギーに変換するクエン酸回路を構成する成分です。
クエン酸回路はエネルギーを生産する際に必要不可欠な機能で、細胞内のミトコンドリアに存在し、加齢と共に細胞に活力がなくなると効率的に働かなくなります。
コハク酸を補うことでミトコンドリア内のクエン酸回路の生成に役立ちます。

まとめ

しじみに含まれる旨味成分が単に美味しいばかりでなく、健康維持や促進に様々な方面で役立つことがご理解いただけたでしょう。
しじみの旨味成分が体にもたらす効果は以下の通りです。
疲労回復
アンモニアの無毒化
免疫力の向上
体調の維持
脳の活性化とストレス軽減
しじみはみそ汁だけでなく、出汁として他の料理に利用することでも多様な効果が発揮されるとは、色んな意味で美味しい食材です。
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